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虹はいったい誰のもの?
〜クマとオオカミの、虹をめぐる戦争ある夏の日の雨あがり。
空いっぱいに虹がかかり、そして消えました。
……たったこれだけのことが、
川を隔てて仲良くくらしていたクマの国と
オオカミの国の戦争のひきがねとなります!にじ
ヨゼフ・ウィルコン/絵
ジークフリード・P・ルプレヒト/文
いずみちほこ/訳30×22cm 25P
定価1,650円(本体1,500円)
空いっぱいにかかった虹。
川を隔てて見上げているのはクマたちとオオカミたち。
こんなにきれいなものをみたのは初めてでした。クマの国の王様とオオカミの国の王様は、消えてしまった虹をさがしますが、もちろん見つかりません。川の向こう側の国にかくしているのではないか。疑いはいっそう深まり、楽しく過ごしていた今までの表情とは一転、にらみ合う王様たち。クローズアップされて眉間に皺をよせてお互いをにらむ疑いのまなざしは、何かよくないことがおこりそうです。そしてとうとう…戦争が始まることに。
戦争が始まる前の晩、知恵のある年寄りのクマが仲間を集めます。白髪がだいぶ混じっていて、目鼻の周りは皺がたくさんありますが、強い意思のもった瞳をしています。彼の呼びかけに答えた若いクマたちとすぐにオオカミの国に行って話し合いをします。翌朝、戦場となる場所には誰も現れませんでした。
ポーランドの作家、ヨゼフ・ウィルコンが描く動物たちは、表情がとても豊か。とくに目の光が印象的だと思います。光っている部分がとても生き生きとしていて、みているうちに、動物たちの気持ちに感情がうつってお話に吸い込まれていきます。
以前ウィルコンさんに、動物にたとえた似顔絵のポストカードのファイルを見せてもらったことがあります。一見動物ですが、目にもちょっと皮肉が込められていたりして、かえって人間的な表情(モデルが人だから当たり前?!)。それぞれのモデルを魅力的に捉えていました(ざんねんながら日本では発売されていませんが)。
ウィルコンさんが描く表情豊かな動物たちに感情移入しやすいのか、読み聞かせの時間に学校に持っていくと、たくさんの子どもが共感してくれます。淡い色使いですが、光と陰のコントラストがはっきりしているので遠くからでもわかりやすいようです。
相手のことを何も知らないのに疑ったり、無意識に傷つけること。悲しいことだけど、実際にあることだよなあ……と子どもたち。年寄りクマの瞳の輝きが、子どもたちの心にも寄り添ってくれますように。
ちなみにウィルコンさんは、彫刻家としても活躍されていて、安曇野ちひろ美術館で作品をみることができます。