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春を待つかえるくん
げんきをだしてね かえるくん
マックス・ベルジュイス/絵と文
清水奈緒子/訳24×21cm 25P 定価1,430円(本体1,300円)
かえるくんシリーズの中の1冊、
冬から春にかけての読み聞かせにおすすめの絵本です。
朝、かえるくんは目を覚ますといつもと様子が違いました。
ひと晩であっという間に雪景色だったのです。たいていの子どもは、雪が降ると無邪気に喜びますが、
かえるくんは違います。
いつものスタイルの、しましまのパンツ1丁では寒すぎます。
今回のかえるくんは、あまりの寒さに
ずっと唇がギザギザで、震えているようです。この絵本のもう1つの主役は“光”だと思います。
雪がはじめて降った朝、
外から反射して部屋に差し込む冷たくまぶしい光。土手でスケートを楽しむあひるさんと、ふるえながら眺めるかえるくんの上で
灰色の空に浮かぶ太陽。薄い黄色です。
足元を見ると、影も薄いです。かえるくんが道に迷って倒れてしまったときは、黒。
闇のなかで、あおむけに倒れているかえるくんの身体に雪が降っています。
(かえるくんシリーズで、数少ない夜の場面です)。冬は続いていて、空はまだ灰色です。
友だちに支えられながら、
セーターを着て、マフラーを巻いて
久しぶりに雪の上に立った日の太陽は、まだ薄い色。そしてある日。
部屋の中、外から暖かい日差しが差し込んでいます。
掛け布団をけっとばし、ベッドから飛び出そうとするかえるくん。
口元が違います。
端が上を向いていて、笑顔!
眼はほとんど同じ“点”で、大きさも前の頁と変わらないはずなのですが、
数倍も大きく、輝いて見えます!
指先までぴんとしていて、元気になったようです。
テーブルには、薬の瓶と果物。
冬の間見守ってくれた仲間からの差し入れでしょう。
でももう大丈夫。必要なさそうですね。……絵になる1枚です。
雪がはじめて降った朝の場面と、ほぼ同じ設定なのに、
かえるくんの表情が違います。
2007年から国内を巡回した“オランダ絵本作家展”では、
この場面がポストカードになり、販売されていました。続いての場面は、
暖かい光に誘われて、飛び出していった外の世界。
太陽が輝いています。濃い黄色です。
ああ、ついに春です。絵本の中に描かれた、冬から春にかけての光の変化を
追いかけているうちに、春が待ち遠しくなります。