セーラー出版は2013年7月1日をもちまして、社名を「らんか社」に変更しました。

  • 春を待つかえるくん

    げんきをだしてね かえるくん

    マックス・ベルジュイス/絵と文
    清水奈緒子/訳

    24×21cm 25P 定価1,430円(本体1,300円)


    かえるくんシリーズの中の1冊、
    冬から春にかけての読み聞かせにおすすめの絵本です。
    朝、かえるくんは目を覚ますといつもと様子が違いました。
    ひと晩であっという間に雪景色だったのです。

    たいていの子どもは、雪が降ると無邪気に喜びますが、
    かえるくんは違います。
    いつものスタイルの、しましまのパンツ1丁では寒すぎます。
    今回のかえるくんは、あまりの寒さに
    ずっと唇がギザギザで、震えているようです。

    この絵本のもう1つの主役は“光”だと思います。
    雪がはじめて降った朝、
    外から反射して部屋に差し込む冷たくまぶしい光。

    土手でスケートを楽しむあひるさんと、ふるえながら眺めるかえるくんの上で
    灰色の空に浮かぶ太陽。薄い黄色です。
    足元を見ると、影も薄いです。

    かえるくんが道に迷って倒れてしまったときは、黒。
    闇のなかで、あおむけに倒れているかえるくんの身体に雪が降っています。
    (かえるくんシリーズで、数少ない夜の場面です)。

    冬は続いていて、空はまだ灰色です。
    友だちに支えられながら、
    セーターを着て、マフラーを巻いて
    久しぶりに雪の上に立った日の太陽は、まだ薄い色。

    そしてある日。
    部屋の中、外から暖かい日差しが差し込んでいます。
    掛け布団をけっとばし、ベッドから飛び出そうとするかえるくん。
    口元が違います。
    端が上を向いていて、笑顔!
    眼はほとんど同じ“点”で、大きさも前の頁と変わらないはずなのですが、
    数倍も大きく、輝いて見えます!
    指先までぴんとしていて、元気になったようです。
    テーブルには、薬の瓶と果物。
    冬の間見守ってくれた仲間からの差し入れでしょう。
    でももう大丈夫。必要なさそうですね。

    ……絵になる1枚です。
    雪がはじめて降った朝の場面と、ほぼ同じ設定なのに、
    かえるくんの表情が違います。
    2007年から国内を巡回した“オランダ絵本作家展”では、
    この場面がポストカードになり、販売されていました。

    続いての場面は、
    暖かい光に誘われて、飛び出していった外の世界。
    太陽が輝いています。濃い黄色です。
    ああ、ついに春です。

    絵本の中に描かれた、冬から春にかけての光の変化を
    追いかけているうちに、春が待ち遠しくなります。

    前のコラム 次のコラム