セーラー出版は2013年7月1日をもちまして、社名を「らんか社」に変更しました。

  • 父の背中と、より道と

    おとぞうさん

    マイケル・グレイニエツ/絵と文
    ほそのあやこ/訳

    25×25cm 32P
    申し訳ございませんが、すでに絶版となっております


    新しい年度が始まります。
    幼稚園、保育園、そして小学校など
    4月から送り迎えをスタートする保護者も多いかと思います。
    緊張のあまり“行きたくない~”と
    泣き出す子も多いかもしれません。
    “お父さんとじゃいやだ~”と泣かれて、
    困っているお父さんもいることでしょう。
    そんな親子におすすめの絵本です。

    主人公の“きあら”は幼稚園に通っています。
    幼稚園へはお父さんが送り迎えをします。
    きあらとお父さんは歩いて帰ります。
    早く、早くと急がせるのではなく、
    子どものペースで歩いて帰ることができるのは、うらやましいことです。
    娘をゆっくりと待つお父さんの背中が印象的です。
    ふたりのより道はといえば……

    おもちゃ屋のショーウインドーを覗きます。
    今ほしいものは、おおきなぞうさん。
    いいなあ……とうっとり眺めます。
    毎回そのままお店に入って、すぐにそれを
    買うというわけにもいかないでしょうから、
    “お誕生日にね~”などと声をかけて、
    そっと手をつなぐのかもしれません。
    他の家族は登場しませんが、ふたりきりで歩く時間は、
    楽しみな時間なのでしょう。

    そして、ある“出会い”によって、お父さんの運命は変わります。
    ここが一番好き、と言ってくださる方が多いですが、
    今回はこのあたりについては控えさせていただきます。

    ……それでも、いつもの、お迎えの時間はやってきます。

    きあらはお父さんのお迎えがくるのを待ち、
    お父さんは娘を迎えに急ぎます。
    きあらはいつものようにお父さんにとびつきます。
    お父さんはあんな姿でしたから(もう、表紙の状態です)、
    とびつくのは大変だったと思います。

    父親だとすぐに気づいて、
    いつものように、いや、いつも以上に喜んでとびついてくれるのは、
    お父さんにとって、うれしかったと思います。

    そして、ラストの場面のお父さんの広い広い背中も、印象的です。
    子どもの側から見ると、お父さんの背中はなかなか見えませんが、
    すべてを受け入れる背中って、こうなんだなと思いました。

    きあらとお父さんは、これからもたくさんのよりみち、
    曲り道、坂道などが待ち受けていると思います。
    とびつかなくなる日もやってきます。
    ひとりでより道をするようになります。
    けれども、そのたびにおとうさんは、きあらと
    正面から向き合おうとするのだと思います。
    裏表紙の背中も大きくて、広いです。

    父の日にもおすすめです。

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