セーラー出版は2013年7月1日をもちまして、社名を「らんか社」に変更しました。

  • 縫って、ほどいて、また縫う


    お正月の晴れ着

    ぺ・ヒョンジュ/絵と文
    ピョン・キジャ/訳

    27×23cm 29P 定価1,650円(本体1,500円)


    今年の春も、上書き袋や手提げ袋、エプロンなどの手作り風グッズが
    お店やネットで販売されています。
    私も苦手で、まわりの方に助けてもらいました。
    以前はお裁縫が好きな人の気持ちがわかりませんでした。

    縫って、間違えたらほどいて、またやり直せばいい、
    そうアドバイスされても、もったいなくてほどけませんでした。
    縫い直すなんて、面倒なこと。時間がもったいない。
    間違えたと思いながらそのまま進めていくと、ますます縫い目がガチガチになり、
    結局ギリギリになって上手な人にやってもらいました。
    当然先生から見れば、本人と、本人以外の縫い目は一目瞭然。
    ますます苦手なまま大人になりました。

    自分の子どもが小さいうちは、相変わらず人に頼っていました。
    でも、雑巾を買うのを忘れて、あわててタオルで縫っていたとき、
    タオル地が縫いやすくて、さくさく進んで、
    ”お裁縫の神さま”に、くすぐられた気がしたのです。
    分厚い雑巾はしぼりにくいと、子どもには不評でしたが。

    まっすぐ縫っていると、縫い目が残ります。
    曲がっていたらすぐにわかります。
    ほどきやすいハサミを手元に置く、
    針に糸を通しやすくする(通しやすい針を使う)、
    などの工夫をするうちに、
    惜しがらずにやり直せるようになりました。

    子育ては縫い物のようには、すぐに結果が見えません。
    なかなか見えません。
    やればやるだけ結果が出る、こういったこつこつ進める作業が楽しくて、
    無性にやりたくなるのかもしれません。
    ”すごいなー、自分! ほんの数分でも結果が出ます。
    肯定的な、晴れ晴れとした気持ちになれます。
    そんなことって、今の自分にはなかなかないので嬉しいです。

    今日は余計なこと言っちゃったな、また喧嘩になっちゃったな
    と後悔しながら縫い物の続きをすると、
    気持ちを整えてくれる気がします。
    ほどいて、やり直して、また縫っていく。

    「ソルビム」に出てくる衣装はお正月の晴れ着で、
    お母さんの手作りです。
    パッチワークや、刺繍が丁寧に施されていて、
    豪華で、可愛らしい衣装です。
    真似しようとしても、なかなかできません。
    かなりの時間が必要だと思います。

    汚れてシミがついてしまったら、刺繍で隠しましょう。
    穴が開いてしまったり、丈が短くなったらパッチワークで継ぎ足しましょう。
    そうだ、せっかくだから子どもが喜ぶように、花の刺繍にしましょう。
    寒くないように、綿を足しましょう。
    ずっと着るものだから、縁起のいいように、この字も刺繍しましょう。
    端切れや綺麗な糸を集めておいて、直しながら着る。
    一見豪華とは反対かもしれませんが、子どもの晴れ着は
    そんな親ごごろが先にあったのだろうなと共感できるようになりました。

    間違えたらほどいて、またやり直せばいい。
    ソルビムを用意したオモニ(お母さん)も
    こんな気持ちをかみしめていたのだとしたら、
    忙しいなか、とりかかる縫い物の時間は、子育て中のオモニにとって、
    支えになっていたはずです。

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