セーラー出版は2013年7月1日をもちまして、社名を「らんか社」に変更しました。

  • 見つめたり、見つめられたり

    クレリア
    えだのうえでおきたできごと

    マイケル・グレイニエツ/絵と文
    ほそのあやこ/訳

    21×29cm 32P
    申し訳ございませんが、すでに絶版となっております

    だれかさんの目

    マイケル・グレイニエツ/絵と文
    ほそのあやこ/訳

    21×29cm 32P
    申し訳ございませんが、すでに絶版となっております

    現在品切れの絵本『クレリア』には、こんなポスターがついています。
    《たずねムシ》
    なまえ:クレリア
    い ろ:きみどりいろ
    おおきさ:のびちぢみじゆうじざい…
    …補足しますと、鮮やかな黄緑色で、レモンイエローの目が印象的な小さなムシです。

    たずねムシのクレリアとともに、 絵本は長らくの間、品切れになっており、
    大変ご迷惑おかけしております。

    おなじくマイケルグレイニエツさん作の『だれかさんの目』の表紙は
    大きく目を開いた主人公の子ザルの顔が描かれています。
    同時に目に入ってくるのはマイケルさんが漢字で描いた“目”という文字。
    力強い字です。
    目という漢字は、目の形を縦にしたんだよ、と
    ついつい近くにいる子どもをつかまえて、
    漢字の成り立ちについて語りたくなります。
    …つよい眼差しで目が、こちらを見つめています。

    『クレリア』では、 
    表紙⇔裏表紙、前見返し⇔後ろ見返しは、
    それぞれ対になっています。
    お話が始まるまえのクレリアと、終わってからのクレリアのシルエットの位置は、
    対称に配置されています。
    お話のあと、対称の位置に、“空白”が配置されているので、
    ぼっかり穴が開いてしまったことに改めて気づきます。

    それは現物大では小さな穴なのかもしれません。
    でも、クレリアのいなくなったちいさな穴を見つめるうちに、
    その存在が大きくなっていきます。
    穴を埋めるために、周りを見回して、クレリアを探したくなります。

    『だれかさんの目』の見返しは、
    誰だかわからないたくさんの目がこちらを見つめています。
    頁をめくるごとに出会う印象に残る“目”。
    筆記具を選ぶとしたら極太の筆で、
    活字にするとしたら極太のフォントの“目”です。

    ふだん生活していて、1日のうちでこんなにたくさんの目、目、目に
    真剣に見つめられることがあるでしょうか。
    絵本を閉じた後、自分も誰かに見つめられている気がして
    つい、後ろを振り返りたくなります。

    2冊合わせて読むと、
    お話の主人公を見つめる自分と、
    お話の主人公に見つめられている自分がいて、
    合わせ鏡に迷い込んだようです。

    けれどもちゃんと戻ってこられるように、
    『だれかさんの目』には、奥付頁の上に、
    小さなあたたかい絵が待っています。

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