セーラー出版は2013年7月1日をもちまして、社名を「らんか社」に変更しました。

  • 十代の図書室の本棚

    ストライプ
    たいへん! しまもようになっちゃった

    デヴィッド・シャノン/文と絵
    清水奈緒子/訳

    28×24cm 32P 定価1,650円(本体1,500円)


    新入生が学校に慣れてきた頃……
    上級生はさらに上級の学校を見学する季節が始まります。
    体育祭、文化祭などの行事、
    学食も、もちろんあれば楽しみですが、
    音楽室や、図書室を見学させてくれる学校もあります。
    大学の図書館は、学生以外の人も入ることができるかもしれませんが、
    中学、高校の図書室は、滅多に中を見る機会がありません。

    小学校の図書室でまず迎えてくれるのは絵本。
    たいていは窓際の、明るい場所に絵本の本棚があります。
    一年生は、小学生になる前に誰かに読んでもらった絵本を見つけて
    “これ知ってる!”自分で声を出して読んでみます。

    小学生も十代と呼ばれる頃になると、絵本からは遠ざかりますが、
    たまに絵本コーナーに戻ってきます。
    例えば夏休みの開放日。プールのあと、髪の毛を乾かしながら、
    エアコンが効いた部屋で、図鑑を眺めるついでに久しぶりに絵本を開いたりします。
    このあたりのお年頃から、「ストライプ」に出てくるおばあさんの言葉が、
    心に響いてくるのかもしれません。

    中学校の図書室には、絵本はひっそりと置いてあります。
    家庭科の授業の資料なのでしょうか。
    もしくは幼稚園の職場体験の資料として?絵本が数冊ほどだと思います。
    自分が読むために、というよりも資料としての絵本のようです。

    高校の図書室は、静かな廊下のつきあたりにあったり、
    みんなが必ず通る賑やかな下駄箱の近くにあったり。
    英語検定の本や進路についての資料が並んでいたり、
    学校によって、本棚の中身にもそれぞれ特色があるようです。
    大型の本棚には、写真集や、名画の画集などなど。
    絵本の姿は見当たりません。
    それでもたまに語学の資料として外国語の絵本がある場合もあります。

    以前、子どもと見学に行った学校でも図書館を公開していました。
    新しい本のなかに、十代だった頃に自分も読んだ本、
    読んだけれども内容を忘れてしまった本、
    読みたかったけれども読むのを忘れていた本とも再会しました。
    この棚の本を何年かかけて読むことができたら幸せだなあと、
    自分が通える訳ではないのに、ついつい棚の奥の方まで行って
    蔵書を見ていたら、一緒にいた子どもに、
    あまり奥に行かないよう、小さな声で注意されてしまいました。
    ……数年前は、逆の立場だったのに。

    十代の本棚は、未知の世界が広がる本、将来のヒントになるような本
    目標に近づくための本がたくさんあって、開くのもわくわくしますが、
    たまには立ち止まったり、振り返ったりする時間も大切だと思います。
    図書室に絵本があれば、そんな時間を過ごすことができるかもしれません。

    “どうやら、おこまりのごようすね” おばあさんの言葉も。
    夜明けにクマと一緒にヒッチハイクをする絵本も、
    お隣の国でお正月のために母親が少しづつ準備した手仕事の絵本も一緒に。

    新しい環境での生活が始まりました。それぞれの学生さんにとって、
    心地よい居場所が見つかればいいなと思います。

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