セーラー出版は2013年7月1日をもちまして、社名を「らんか社」に変更しました。

  • 心地よい音を楽しむ

    ヒック ゴロゴロ
    はっくしょん ひめ

    グデュル/文
    マルジョラン・ポティ/絵
    ふしみ みさを/訳

    29×25cm 25P 定価1,620円(本体1,500円)


    かわいらしい絵に惹かれて この絵本を手に取った方は、
    声を出して読むときに気をつけてください。

    素敵なお城に住むお姫さまの悩みは、
    思いがけない時に、大きな音が出てしまうこと。
    ヒック、ゴロゴロ、ハックション!
    あまりの文字の大きさに、声に出すのが恥ずかしいくらいです。
    けれども、音読した方が数倍楽しめる絵本です。

    自分が出す音は、周りの人を不快にしている、
    と気にすればするほど止まらなくなって、
    お姫さまは悩み続けます。
    自分のためではなく、他人のためでもなく
    意思とは関係なく動いてしまう困ったくせ。

    静かな夜、花粉の時期になると、
    気の毒なご近所の方のくしゃみが聞こえてきます。
    本気のくしゃみはすぐには止まらなくて、
    連発しています。
    くしゃみそのものは意思とは関係なく出てしまうけど、
    自分の身を守るため、ベストな体勢を取るのでしょうか。
    (くしゃみや咳で、肋骨が折れることもあるようです)
    何となく音にリズムが出来ていて、
    大変失礼なのですが、こっそり
    (プロのくしゃみ)、そしてご本人を(くしゃみのプロ)
    と呼ばせていただいています。

    くしゃみのプロのように本気で読むと、
    リズムがお話を飛び出して
    楽しんで読んでいる人の姿の方が、
    お話よりも前にでて来てしまうので、
    音量、表現に気をつけないといけないのですが……

    音量といえば、思い出したことがあります。
    今年は地元のお祭りの練習を数ヶ月前から見守りました。
    夜、シャッターを降ろした商店街での練習。
    近所の人たちも、この時期は見守ってくれているようですが、
    打楽器や笛、三味線なども揃うと相当な音量。
    繰り返しのフレーズをライブ演奏し続ける皆さんの
    体力と、集中力に驚きました。
    今流行りの曲でいうと、何曲分でしょうか……?
    踊る人たちの迫力や、話し言葉とちょっと違う独特のトーンのかけ声も
    演奏のボリュームに負けていません。

    けれども、さすがに21時を過ぎると、楽器はおしまい。
    商店街の灯りも消されて、残った街灯の下で
    ちょっと控えめに手拍子で練習を続けていました。
    脇役だった手拍子が重要な役になります。

    踊りを見ながら手拍子を合わせて、
    手拍子を聴きながら踊りを合わせる。
    シンプルだけど、とてもいい時間です。
    練習の汗もだいぶひいてきて、
    そろそろクールダウンです。
    メトロノームなどの機械的な一定のリズムではなく、
    (踊りの練習では使いませんが)
    その場で見守る人たちの手拍子は、
    心地よい踊りになるのだなと実感しました。

    音を奏でる人は音だけを楽しむのではなく、
    踊る人は踊りだけを楽しむのではなく、
    そこに生まれてくる音に合わせて身体を動かすのは、
    心地よい、贅沢な時間なのだと改めて思いました。

    さてさて絵本に戻ります。
    心地のよくない自分の音に悩む主人公のお姫さまは、
    自分とは違ったリズムを持つ人と出会います。
    二人が出会って、混ざり合ったその音は、
    素晴らしい音楽になるわけでもなく、
    自身の困ったくせが治るわけではありませんでした。
    けれども、お互いを認め合ううちに、
    思わず出てしまう自分の出す音も、
    自分の一部として受け入れられるようになったのだと思います。

    音読をするときは、前に出過ぎず、後ろに下がりすぎず。
    踊りに寄り添って手拍子をする時のように、
    絵本にそっと寄り添いながら、音を楽しんでくださいね。

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